うつ病は、うまく休めなくなってしまうという特徴を持った病気でもあります。うつ病を未治療のままで放っておくと、症状は次第に悪化し、慢性化し、治療への反応性も悪くなっていきます。人には自然治癒力というものが備わっておりますが、その力を十分に高めていくためにも、こころとからだの休息が必要なのです。十分な休養と適切な治療を行っていけば、多くのうつ病の患者さんは快方に向かっていきます。そして、早期発見、早期治療であれば、なおさら、治療期間も短くて済むのです。
治療では、患者さんが自らの内面について語り、医師がそれを聞き、受容し、共感し、そして、それに対する解決策や対処法を一緒に考えていくことで、患者さんのこころが明るく、元気になるお手伝いをさせていただく精神療法を行います。苦しかったことや辛かったことなどを、誰かに話し、共有してもらうことで、気持ちは軽くなります。また、自分自身の歪んだものの見方や考え方に気付き、より柔軟で現実的な思考ができるようにもなっていきます。心療内科や精神科では、精神療法は、非常に重要な役割を担っており、当院でも一番力を入れているものです。
お薬は、今までの苦しかった症状をより早く緩和してくれる、非常に頼もしい存在となります。
SSRI(Selective Serotonin Reuptake Inhibitor;選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(Serotonin and Noradrenaline Reuptake Inhibitor;セロトニン・ノルアドレナリ ン再取り込み阻害薬)などのタイプの抗うつ薬は、従来の三環系や四環系の抗うつ薬よりも、便秘や口渇、排尿障害などの抗コリン作用による副作用が少ないという利点があり、現在、我が国では、うつ病治療の第1選択薬として、多くの心療内科や精神科で処方されております。
うつ病では、セロトニンやノルアドレナリンといった、気分や意欲、食欲、記憶などに関連した脳内の神経伝達物質の細胞間(シナプス間隙)での濃度が低い状態になっているということがわかってきておりますが、SSRIやSNRIは、神経細胞から放出されたセロトニンやノルアドレナリンが再び細胞内に取り込まれるのを防ぐことで、細胞間(シナプス間隙)でのそれらの濃度を高く維持させ、抑うつ気分や意欲低下、不安などの症状を改善させるのです。
なお、当院では、お薬の量は、患者さん個々の病状に合わせて、必要最小限の量で処方するようにいたしております。